射精障害(分類と対処法)

射精機能は脳の興奮と脊椎神経伝達、骨盤の筋肉収縮が複雑に関与する身体機能の一つです。射精障害はその障害状況により射精機能低下、膣内射精障害、無射精、早漏、遅漏に分類されます。このページではそれぞれの射精障害の詳細と対応について解説します。

射精機能低下(精液量減少、勢いの低下、オーガズム低下)

一般的に年齢と共に射精機能が低下していきます。射精機能低下は「精液量の減少」や「勢いの低下」など射精の衰えとして自覚することが多く、多くの方がお悩みになっていることだと思います。また加齢により絶頂感(オーガズム)が徐々に低下することもあります。性機能外来ではそのような症状に対して、現状の把握と実践的な対処法を説明しています。

「病院へ行くほどじゃないけれど、、射精機能の低下を自覚している」と悩んでいらっしゃる方。自助努力で改善できる部分もあります。まずは外来を予約する前に性機能専門医の木村が執筆した以下の記事をお読みください。射精障害のチェックと対処法を確認できます。

射精の衰えを感じているあなたへ −性の専門医が伝えたい7つのこと−

膣内射精障害

膣内射精障害とは自慰による射精はできても膣内で射精できない状態のことをいいます。女性の膣内で射精できないと自然妊娠が難しくなり不妊となります。そのため、近年では社会問題になっています。原因として、不適切なマスターベーション、心因性、勃起障害によるものがあります。

不適切なマスターベーションで膣内射精障害になっているのは3分の1から半数程度です。最も多いのは手で強くペニスを握りすぎたり、うつ伏せの状態で刺激したりする方法です。こうした強い刺激での射精に慣れてしまうと膣内では射精しづらくなります。治療としてマスターベーションの仕方を修正で膣内射精が可能となる場合があります。

しかし実際に膣内射精障害の半数以上はマスターベーションの方法は正常であるにもかかわらず、膣内で射精できない方たちです。我々はこのような状態を心因性膣内射精障害と診断していますが、これが最も治療が難しく時間がかかります。背景に心理的問題があるためマスターベーションの修正では対応出来ません。

このように膣内射精障害にもいろいろな原因と治療法があります。そこで膣内射精障害を自覚している方はまず性機能専門医であり当該外来の担当医である木村が執筆した記事をお読みになることをお勧めします。

膣内射精障害を克服しよう −性の専門医が教える秘訣−

無射精(Anejaculation)

無射精は精液が出ない状態のことです。特定の状況によって起こる場合と、常に起こる場合があります。またオルガスム(絶頂感)を得ることができる場合とできない場合があります。オルガスムが得られる場合はドライオルガスムという状態です。その原因として前立腺癌、前立腺肥大症の手術、糖尿病や多発性硬化症による神経障害、薬剤性、精路の閉塞、脊髄損傷、低テストステロン血症があります。診断するには検査して鑑別する必要があります。

逆行性射精 (Retrograde Ejaculation)

逆行性射精は無射精の原因としては多く見られ、射精時に精液が尿道側ではなく、膀胱側に逆流してしまう現象です。糖尿病による末梢神経障害、前立腺の手術、薬の副作用(抗精神病薬など)が根本的な原因になっていることがあります。挙児を希望される方は不妊になってしまいます。尿中から精子を回収する方法もありますが、精子の質が悪くなります。そのため、精巣内から精子を採取する方法が多く行われています。それ以外の方は、放置しても害がないため治療は必要ないことがあります。お薬の変更など原因となっている要因を取り除くことが出来ない場合は治療することは困難な場合が多いです。

早漏 (Premature Ejaculation)

持続時間に関して明らかな定義はなく、本人とパートナーがどの程度悩んでいるかによります。国際性機能学会の定義では、1分間未満の射精です。しかし、これは臨床研究のために定義された意味合いが強く、実際に自分が早漏と感じるのは2分以内に射精してしまうケースが多いようです。

世界的にはDapoxetine(Priligy)がPEに対して最も多く処方されています。残念ながら本邦では認可が下りていません。抗うつ薬であるSSRIや痛み止めであるトラマドールが早漏に効果があることもあり、off label (適応外)で使用されることがあります。

遅漏 (Delayed Ejaculation)

どのくらいの時間性行為が続けば良いかという国際的な定義はありません。持続時間は様々な要因によって左右されます。例えば、加齢によりオルガスムに到達する時間が長くなる場合があります。

性行為時間はIELT (intervaginal ejaculation latency time)で評価されます。これは膣内挿入から射精するまでの時間で、世界平均は5.4分とされています。遅漏の多くは射精に30分以上のIELTが必要になります。

現在これを改善するための具体的な治療法はありません。なかなか射精しない方に精神科のお薬が原因となっている場合があります。その原因を取り除く治療が主体となり、治療が困難な場合もあります。

参考サイト