unmet needs(アンメット・ニーズ)とは企業のマーケティング活動において、まだ満たされていない顧客の潜在的な要求・需要のことを意味します。医療においてはunmet medical needsという言葉があり、いまだ満たされていない医療ニーズ、つまり、いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医薬品・治療などの医療ニーズのことです。
今年は色々な学会で5年間の帝京アンドロロジー診療を振り返り、男性更年期(LOH)診療におけるアンメット・ニーズに関して検討したので報告します。
この表は5年間での男性更年期の治療方法です。当院でのテストステロン補充療法は筋肉注射だけではなく院内で軟膏製剤も作っていますので、維持療法として活用しています。
ズバリ表に示すように、本邦の治療選択枝は諸外国との比較において大きく水をあけられた状態です。世界的にテストステロン補充療法は筋肉注射以外に軟膏やパッチ(貼り薬)、皮下に埋め込むペレットなど様々ですが、日本では半分も使えない状況です。国際学会に参加して感じることですが、中国や東南アジアと比べても導入が遅れていると思います。
原因としては日本の皆保険制度が男性更年期のようなQOL疾患に対して手厚くないことや、企業がこれらの製品を市場に投入する意欲がないことが挙げられると思います。企業はビジネスなのでペイできるかできないかで考えますから、あまり必要性を感じていないかもしれませんが、これこそ臨床とはかけ離れておりアンメット・ニーズといえます。この様な状態が続くと個人輸入してしまう方が多くなり、自己責任で使用といえども健康被害の可能性もあり決して望ましい形ではありません。
使ってはいけない場合や副作用の懸念もありますので、市販のテストステロン軟膏の購入、初期導入は個人的にお勧めしておりません。テストステロン補充療法は基本的に医師の管理のもとで行ってください。また当院の院内製剤テストステロン軟膏を試してみたい方は、ぜひ更年期外来をご予約ください。
文責 木村将貴