無精子症の原因は?
無精子症とは精液検査で精液中に精子を認めない状態のことを言います。無精子症は大まかに非閉塞性無精子症と閉塞性無精子症に分類されます[1]。非閉塞性とは精巣そのものの精子を作る機能がない、もしくは著しく低下している状態、閉塞性とは精子は作られているが、前述した精子の通り道の途中に問題がある場合で、避妊手術後、精巣上体炎後の閉塞、ヘルニア手術後、先天性精管欠損などが原因になります。
非閉塞性無精子症の診断は?
前述したように精巣そのものに精子を作る力がないものを、非閉塞性無精子症(Non obstructive azospermia:NOA)と呼んでいます。精液検査のほかに、精巣サイズ、ホルモン(内分泌)検査、染色体検査などの結果から診断いたします。
非閉塞性無精子症の原因は?
多くは原因不明とされています。すなわち、現在の医学では有効な治療法がまだ見つかっておりません。無精子症と高度乏精子症の約5.8%に染色体の変化を認めるとされていますので、無精子症の原因を調べる目的で染色体検査をすることがあります[2]。原因が分かったからといって決定的な治療法はありませんが、治療をした時の成績や、遺伝形式など生まれてくるお子さんに関しての情報を得ることができます。染色体は患者様の固有の情報ですので、プライバシーに配慮しながら開示を行います。
染色体の変化について
無精子症や高度乏精子症で染色体の変化が起こっている確率は、前述したように5.8%と報告されており、一般人口の10倍強の確率で染色体変化が起こっています。染色体には常染色体とXYの性染色体がありますが、前述した5.8%のなかでも性染色体の変化が4.3%、常染色体の変化が1.5%とされています。
性染色体の変化が起こっている方の主なものにクラインフェルター症候群があります。クラインフェルター症候群は500人に1人の比較的高い確率で出生すると報告されており、主な染色体の核型は47XXYとなります。後述するMD-TESEによって約半数の方から精子が回収できます。
常染色体の変化として最も認められるものは、ロバートソン転座、相互転座、逆位、マーカー染色体などです。複雑な遺伝形式をとるので治療の相談と同時に遺伝カウンセリングの専門家を御紹介することも可能です。
近年、Y染色体のAZF領域の微小欠失が精子形成に関わることが判ってきました。MD-TESEをする際の回収率の判断材料になりますので、当科ではAZF領域欠失の検査をオプションで行っています。
顕微鏡下精巣内精子採取術(マイクロテセ)の実際
無精子症の方の中には、射精する精液中には精子を認めなくても、精巣内の一部分で精子が造られていることがあります。そのような場合は顕微鏡を使って、精巣中の精細管を観察し、精子が造られていそうな太く白い精細管を限定的に回収する手術があり、これをmicro dessction(MD)-TESEといいます。切開は陰嚢中央に約3㎝の創になり、術後の創が目立つことは殆どありません。術後は創の確認や、テストステロンが低下していないかをチェックします。
MD-TESEをご希望の場合は顕微授精を予定している不妊クリニックとの連携が必要になります。現在当院ではマイクロテセを行なっておりません。まずは診察、検査で診断をしたのちに都内クリニック(杉山産婦人科)を御紹介させて頂いております。
治療費用
2022年4月よりマイクロテセは保険診療となりました。それに伴って、 診察後に適応があれば手術に関しては杉山産婦人科新宿に紹介させて頂いております。同院では専門外来担当の木村が保険診療、日帰り全身麻酔でMD-TESEを行っています。
問い合わせ
- 男性不妊症の診断、治療をご希望の方は泌尿器科 男性不妊外来(木曜日)で対応しておりますので予約専用電話03-3964-1498でご予約をお取りください。
- 紹介状がなくても予約は可能ですが、紹介状がない場合は選定療養費の5400円が必要になります。
- 診察は生殖医療専門医の木村が担当します。
参考文献
[1] Goldstein M, Rosenwaks Z. Male infertility in the era of ART: why treat; how to treat. Semin Reprod Med. 2009 Mar: 27:107-8
[2] Johnson MD. Genetic risks of intracytoplasmic sperm injection in the treatment of male infertility: recommendations for genetic counseling and screening. Fertil Steril. 1998 Sep: 70:397-411