顕微鏡下精管精管吻合術(パイプカット後の再吻合手術)

パイプカットした後に修復したい

バセクトミー(パイプカット)したあとは当然ながら無精子症になります。しかしながらバセクトミーをしたあと、6%の方が何らかの理由で修復を試みています[1, 2]。この手術を希望され当科を訪れる患者様の理由としては離婚された後に新たなパートナーができて妊娠を望む方、子供との死別などがあります。バセクトミー を行なった時には永久的な避妊を考えていても、人生には様々な予期せぬことが起こり得ます。もし、あなたがバセクトミー した後で考えが変わって戻したいというのであれば、当科はあなたにとって最善の手術を行なっている施設です。

上記の理由以外の本手術の適応として、バセクトミー後疼痛症候群:post-vasectomy pain syndrome (PVPS)があります。バセクトミー後1000人に1人程度の割合で、慢性的な睾丸の痛み、慢性的な精巣上体炎症状を訴える方がいます。これらのような合併症が起こってしまった患者さんに対しても精管再吻合術は効果があると報告されており、当科でも相談のうえ適応としています[3]。

顕微鏡下精路再建術手術について

この手術は手術用顕微鏡を使用して全身麻酔で行いますので、全国でも限られた施設でしか行われておりません。男性避妊手術後の無精子症に対しては、顕微鏡下精路再建術の中の精管精管吻合術が行われており、当科でもこの方法を用いています。

傷は陰嚢に3-4cmの縦切開が2ヶ所になりますが、数ヶ月経過するとほとんど傷は分からなくなります。まず精管と精管を切り離して、精子の出現を確認します。その後、特殊な固定器具を使用して精管と精管の断端を保持します。次に顕微鏡手術用の細い糸で精管断端を縫い合わせます。合計3層で精菅を縫い合わせて、最後に陰嚢皮膚を縫合します。抜糸は必要ありません

この技術は高い技術力と集中力が要求されます。帝京大学医学部附属病院では単一術者がコンスタントにこの手術を行っており、安心して手術を受けて頂くことができます。

吻合後の精管

 手術成績

開通率(patency rate)と自然妊娠率(pregnancy rate)は個々人により差がありますが、2014年に日本全国の精路再建術のまとめが発表されました。それによると、精管精管吻合の開通率は全国平均で68.9%、自然妊娠率は全国平均で27.5%です[4]。これは、2000年の成績とそれほど変化しておらず、安定的な成績を維持しております。

帝京大学での現在までの成績ですが、全国平均より良好な結果となっています。手術中に精巣側の精管から精子が確認できた場合は、9割以上で術後に射出精子が確認されました。その理由として、時間はかかりますが丁寧な3層縫合を行なっているからだと考えています。

手術中に精子が確認できなかった場合は、術後の精子出現の確率は低くなりますが、しばらく待っているとわずかながらでも確認できることが多々あります。万が一射出精子を認めなかった場合は精巣内精子を回収するため後日TESEを行うことができます。

またバセクトミーしてからつなぐまでの時間ですが、一般的に理解されているのはバセクトミー後の期間が長ければ長いほど、開通率が落ちるというものでした。しかし、最近の報告では10年以上前のバセクトミーの再吻合術でも、熟練した術者が行えば満足した結果が得られます。従って、10年以上前のバセクトミーでも再吻合術を躊躇うことはないということが示唆されます[5]。当院でも35年前にバセクトミーをした方で術後に精子が出現したケースを経験しています。

手術後の状況

手術2週間後から射精開始、1−2ヶ月後に精液検査をして、精子の出現を確認します。

精管再吻合手術は自然妊娠が期待できる手術です。術後数ヶ月後に自然妊娠の報告も多数頂いております。そうではなくても、ある程度精子が出現したら比較的コストがかからない人工授精を利用して妊娠が可能な場合もあり、コストベネフィットに優れています[6]。しかしながら、全ての人が希望通りに自然妊娠や人工授精で妊娠できるわけではありません。精子が出現しても精子の運動率や濃度が悪く自然妊娠や人工授精では妊娠に至らないケースもあります。また一度出現した精子が再狭窄のため精液中から消えてしまうこともあります。そのため、一つのオプションとして術後数カ月で精液の中に精子が出現したら一度精子を凍結保存することをお勧めしています。

外来受診、入院について

当院ではこの手術を2泊3日の入院で行っています。手術時間はおおよそ2時間半から3時間です。退院後翌日から通常の仕事は可能です。まずは男性不妊外来を受診して頂いて、問診、診察を経て、その日に手術日を決定できます。遠方の方はメールで相談することもできます。

問い合わせ

帝京大学泌尿器科は東京都内の大学病院で男性不妊外来を行っている数少ない大学病院の一つです。本手術をご検討の方は泌尿器科・男性不妊外来で対応しております。ご不明点はFAQを参照するか、ホームページの相談メールからお問い合わせください。

担当医:男性不妊外来 木村将貴

参考文献

[1]Brannigan RE. Vasectomy reversal: indications and outcomes. J Urol. 2012 Feb: 187:385-6
[2]Sandlow JI, Nagler HM. Vasectomy and vasectomy reversal: important issues. Preface. Urol Clin North Am. 2009 Aug: 36:xiii-xiv
[3]Horovitz D, Tjong V, Domes T, Lo K, Grober ED, Jarvi K. Vasectomy reversal provides long-term pain relief for men with the post-vasectomy pain syndrome. J Urol. 2012 Feb: 187:613-7
[4]Taniguchi H, Iwamoto T, Ichikawa T, et al. Contemporary outcomes of seminal tract re-anastomoses for obstructive azoospermia: a nationwide Japanese survey. Int J Urol. 2015 Feb: 22:213-8
[5]Grober ED, Karpman E, Fanipour M. Vasectomy reversal outcomes among patients with vasal obstructive intervals greater than 10 years. Urology. 2014 Feb: 83:320-3
[6]Lee R, Li PS, Goldstein M, Tanrikut C, Schattman G, Schlegel PN. A decision analysis of treatments for obstructive azoospermia. Hum Reprod. 2008 Sep: 23:2043-9