ビタミンDと男性不妊

2023年の新しい論文で、ビタミンDと男性不妊(精液検査)のメタアナリシスが報告されたので紹介します。

Full article: Vitamin D supplementation for improving sperm parameters in infertile men: A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials (tandfonline.com)

この論文は、不妊症の男性にビタミンDを補給することが精子の運動性や形態にどのような影響を与えるかを調べたものです。ビタミンDは、精子の運動性や代謝に関与すると考えられていますが、実験的な研究ではビタミンDと精子のパラメーターとの間に一貫性のない結果が示されていました。この研究では、不妊症男性に対するビタミンD補給と精子のパラメーターに関する過去の研究をClinicalTrials.gov、IRCT.ir、Europe PMC、およびPubMedから検索し、系統的なレビューとメタアナリシスを行っています。バイアスのリスクはRisk of Bias version 2 (RoB v2)を用いて評価し、統計解析はReview Manager 5.4ソフトウェアを用いて行っています。

結果として、不妊症の男性648人を対象とした5つの試験が含まれました。メタアナリシスの結果、ビタミンD補給は不妊症の男性においてプラセボよりも有意に精子運動率[平均差4.96 (95% CI 0.38, 9.54), p = 0.03, I2 = 69%]、前進運動率[平均差4.14 (95% CI 0.25, 8.02), p = 0.04, I2 = 89%]、正常形態率[平均差0.44 (95% CI 0.30, 0.57), p < 0.00001, I2 = 0%]を改善することが示されました。しかし、全精子数(p = 0.15)、精子濃度(p = 0.82)、精液量(p = 0.83)は両群間で有意差はありませんでした。この結果は下のフォレストプロットを見てもわかりますが、D.精子運動率とE.前進運動率、F.精子形態はビタミンDの利点がありそうです。

最近は原因不明の精液所見の悪化にサプリメントを摂取する方も多いと思います。抗酸化療法として、これらのサプリメントからコエンザイムや抗酸化ビタミンを摂取することは大切です。したがって抗酸化ビタミンであるビタミンA, C, Eが含まれるサプリを服用していることが多いと思いますが、本研究からわかるように、ビタミンDも精子の質を向上させるために欠かせないかもしれません。

結論として、ビタミンD補給は不妊症の男性において精子運動性、前進運動性、形態を改善する可能性があります。ビタミンD補給は男性不妊症の管理に考慮されるべきかもしれません。ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、過剰摂取は注意すべきかと思いますが、適切な量を取るように心がけましょう。