男性更年期と精神疾患

男性更年期(LOH)診療をしていると実に多くの患者さんが既にメンタルクリニックに通っており、お薬を内服されています。メンタル疾患と男性更年期は症状が非常にオーバラップしていますので、これは珍しいことではありません。しかしテストステロン補充療法をするにあたり、同じ男性更年期でもメンタル疾患を抱えている人とそうでない人に治療効果の差があるのかどうか、帝京のデータで検討し発表したので報告します。それでは見ていきましょう。

 

原文:精神疾患を伴うLOH症候群に対するテストステロン補充療法の検討

https://ci.nii.ac.jp/naid/40021710680

 

研究デザイン

  • 2012年から2016年までLOH症候群と診断されテストステロン補充を行なった201症例。
  • テストステロン補充療法を行った中で精神疾患を合併している70症例(35%)を検討対象とした。
  • 精神疾患薬物療法別にテストステロン補充療法の効果を比較した。

 

結果ですが精神科やメンタルクリニックでの投薬内容から、背景にある精神疾患は5割強がうつ病・抑うつ状態、3割が全般性不安障害、1割が統合失調症であることが判明しました。

 

そして精神疾患を合併している症例は精神疾患がない症例に比べて比較的若い方が多かったのですが、治療前テストステロン値はどちらの群も低く、違いは認められませんでした。

 

図はテストステロン補充療法の効果、治療経過をグラフにまとめたものです。継続率、中止率、完了率ともに2群間に違いは認めておらず効果は同等と判断しています。また精神疾患別における治療効果に関しては、抗うつ薬や抗不安薬を投与されている症例でも約4割に自覚症状の改善が認められました。統合失調症のような症例では治療効果の判定は困難でした。

 

「まとめ」

過去の報告でも抑うつや不安神経症の症例にもテストステロンが低かった場合は補充療法が一定の効果があるとのことです。以上よりたとえ抗うつ薬や抗不安薬を内服しているような症例でも低テストステロンを認めた場合、積極的な治療介入が考慮されるべきかと考えています。

 

文責 木村将貴