先日性科学学会に出席し、本邦の包茎手術について考えることがありまとめてみました。
包茎手術は紀元前のエジプトのレリーフにも示されている様に古来から存在する手術でありますが、同じ術式でも全世界でこれほど扱いが異なる手術は珍しいのかと思います。その原因としてはやはり文化的背景の違いにあるのでしょう。
文化的背景の違いを簡単にまとめると、先進国でも考え方に違いがあるようです。次の地図は何だと思いますか?
WHOがまとめた包茎手術マップです。アフリカやオセアニア諸国は80%以上が包茎手術を受けていることが分かります。お隣の韓国も同様に高い割合ですね。北米やオーストラリアも20−80%とヨーロッパや南米、アジアと比較すると高めです。
アメリカ泌尿器科学会(AUA)は包茎手術についてガイドラインを出しており、性感染症のリスクを減らすなどの利点と手術のリスクをよく説明した上で、熟練した術者が新生児の包茎手術を行うことは肯定的な文章です。アメリカ疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の見解も同様です。
しかしこの様な主張に真っ向から否定的な団体も存在します。
ヨーロッパではアメリカほど包茎手術はされておりません。イギリスの泌尿器科、小児外科の共同声明によると病的な場合(硬化性萎縮性苔癬や慢性炎症)を手術の絶対的適応、尿路感染症や外傷、繰り返す嵌頓包茎、尿路奇形、絞扼輪による痛み、性機能障害があったときを相対的適応としています。
一方、日本の現状ですが日本泌尿器科学会からのガイドラインや声明文はありません。そして美容外科による包茎手術が問題視されている現状があります。仮性包茎は日本独自の概念であり、美容外科広告により仮性包茎にコンプレックスを与えて手術に誘導することによりトラブルも起こっています。詳しくは国民生活センターのサイトをご覧ください。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160623_2.html
京都ルネス病院の小林先生が発表されたTweeterでアンケートです。結果として70%が仮性包茎でしたが、ほとんどの女性は気にしていない様です。下記サイトを参考にしていただければと思います。
話は変わりますが、むきむき体操というプロモーションがあります。
救急外来にくるカントン包茎の乳幼児は大概このむきむき体操に失敗して包皮が戻らず困ってしまった子供たちです。衛生面に配慮することが大事で、むりな乳幼児期からの包皮脱転は控えるべきかと考えます。
「まとめ」
乳幼児のむきむき体操、成人の美容外科トラブルなど、結局はトラブル解消でわれわれ泌尿器科に負担がまわってきます。この様なトラブルを軽減するためにも適切な団体より正しい啓蒙活動が必要。小児・成人包茎共に泌尿器科学会としてのステートメントが必要ではないかと思っています。