父親年齢の上昇は、先進国では全世界的に認められる現象だと思います。男性は加齢に伴って、精子の質が低下するなど様々な問題が引きここされることが判明しています。今回紹介するのはアメリカの泌尿器科医による2017年の論文で、1972年から2015年までの出生データを分析し、男性不妊の観点から考察しています。
The age of fathers in the USA is rising: an analysis of births from 1972 to 2015
アメリカ合衆国では、父親の平均年齢は1972年の27.4歳から2015年の30.9歳へと3.5歳も上昇しました。この傾向は全ての人種や民族、教育水準、地域において見られます。では、なぜ父親の年齢が上がっているのでしょうか?そして、それはどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
父親の年齢が上がっている理由は複数ありますが、主なものとしては以下のようなものが挙げられます。
– 結婚や出産を遅らせる傾向があること
– 避妊法や不妊治療の進歩により、高齢でも子供を持つことが可能になったこと
– 経済的な理由やキャリアの発展などで、子供を持つことを先延ばしにする人が増えたこと
父親の年齢が上がることには、一見するとメリットもあります。例えば、高齢の父親はより安定した収入や経験を持っていることが多く、子供に対してより責任感や関心を持つことができます。また、高齢の父親は自分の健康に気を付けるようになり、長生きする可能性も高まります。
しかし、父親の年齢が上がることには、デメリットも少なくありません。特に、子供の健康や発達に関しては、様々なリスクが高まります。例えば、高齢の父親から生まれた子供は以下のような問題を抱える可能性が高くなります。
– 先天的な障害や染色体異常を持つこと
– 自閉症や統合失調症などの精神障害を発症すること
– 学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの行動障害を持つこと
– 低体重児や早産児として生まれること
– 新生児死亡率や乳児死亡率が高くなること
これらのリスクは、父親だけでなく母親の年齢も影響しますが、父親の方がより顕著であることが研究で示されています。また、これらのリスクは累積的であり、父親の年齢が一歳上がるごとに増加します。
アメリカ合衆国では、父親の年齢が上昇する傾向は今後も続くと予想されます。そのため、高齢出産に伴うリスクに対する認識や対策が必要です。例えば、高齢の父親は定期的に健康診断を受けることや、子供の発達を注意深く観察することが重要です。また、政府や社会も、高齢出産に対する支援や教育を充実させることが求められます。
父親の年齢は、子供の健康や発達に大きな影響を与えます。父親になることは素晴らしいことですが、それには責任も伴います。父親の年齢が上昇する現代社会においては、その責任をより意識する必要があるのかもしれません。
日本でも同様のことが起こっています。
e-Statという、日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイトでは、1975年から現在までの父親年齢を調べることができます。
人口動態調査 人口動態統計 確定数 出生上巻 4-19 出生順位別にみた年次別父・母の平均年齢 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
論文とほぼ同じ時間軸で調べると、第一子の父親年齢は1975年の28.3歳から2015年には32.8歳と4.5歳も上昇。2015年時点ではアメリカの父親年齢より日本の方が1.9歳も高く、その上昇率も高くなっています。現在は2021のデータで日本の父親年齢は32.9歳であり、さらに進行しています。
これが日本における父親年齢の折れ線グラフになります。
この論文のように、アメリカで警鐘がならされている父親年齢の上昇ですが、日本はもっと父親の高齢化が進んでいるかもしれません。母親だけではなく、父親も年齢が高まるにつれ、妊娠率・流産率や子供の影響があることを知っていただきたいと思っています。